楽しく学べる!財務・マーケティング NO.24
🟦1. 「目利き」とビジネスモデルの再構築
金融機関の企業分析は長らく財務諸表分析が中心だった。しかし財務諸表は過去の記録であり、そこから得られるのは過去の姿にすぎない。それにもかかわらず、過去の数値を企業の“現在の姿”として捉えてしまうケースは少なくない。決算書を受け取る時点では、すでに決算日から1か月ほど経過していることも多い。
本来、こうしたタイムラグは訪問活動によって補い、企業の実態を把握しながら中小企業金融に臨むのが地域金融機関のスタイルだった。しかしそのスタイルは形骸化し、金融庁が「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム(以下リレバン)」を示した背景には、こうした問題意識があった。
従来の地域金融機関が行っていたのは、経験則に基づく「観察による実態把握」である。これは業況悪化の兆候を早期につかむには有効だが、企業の実態や将来性の評価には必ずしも直結しない。また、観察を続けていても、リレバンが求める「経営者への助言などのコンサルティング能力」が自然に身につくわけでもない。
リレバンが求めたのは「分析による実態把握」と「問題解決力」であり、従来型営業の強化ではなく新しいビジネスモデルの構築だったのである。
しかし実際には、地域金融機関はリレバンの各項目に個別対応しようとし、総合的なビジネスモデルとして捉える視点が不足していた。たとえば「目利き研修の受講者数」を増やすことに注力したり、「無担保融資の件数」を形式的に増やすなど、部分最適に陥った例も見られた。
🟦2. 過去の分析から将来キャッシュフロー重視へ
将来を完全に見通すことはできないため、財務格付けシステムや投資理論の多くは過去データに依存している。しかし融資は将来に向けて行うものであり、企業の返済能力を真に見極めるには将来キャッシュフローの生成能力を重視する必要がある。返済財源は将来のキャッシュフローだからである。
現場では直近のキャッシュフローから返済可能年数を算出することはあっても、将来キャッシュフローの予測は十分に行われていないのが実情である。
将来キャッシュフローを予測するには、事業の仕組みやプロセスを理解し、売上を生み出す力を分析する必要がある。これは定性分析の領域であり、担当者には経営理論、業界知識、企業固有の実態理解が求められる。経営者へのインタビューなどの情報収集も不可欠で、これはコンサルティングのプロセスと共通する。
金融庁が示すキーワードは、 リレバン(目利き) → 間柄金融 → 地域密着型金融 → 事業性評価 と変遷してきたが、本質は当初のリレバンと変わらない。
事業性評価を行える人材の育成は容易ではない。バリューチェーンやローカルベンチマークなどのツールは存在するが、それらを使えばすぐに評価できるわけではない。必要なのは分析力・思考力であり、金融機関の教育体系そのものを見直す必要がある。
さらに言えば、監督官庁の指示に従うだけの組織運営から脱却し、自らの価値観でビジネスモデルを構築する発想転換が求められる。「リレバン」と略される理想は、現実よりも高いレベルを要求しているが、そこにこそ金融機関の進むべき方向がある。
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記事の中でキャッシュフローについて述べました。ブログのシリーズ1「簿記はいらない!経営分析」はキャッシュフローを中心に論じたものですが、ここでは最初にキャッシュフローを取り上げたNO.9をご紹介します。→簿記はいらない!経営分析 NO.9「融資審査におけるキャッシュフローの重要性」
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