NO.21 経常収支比率によるっキャッシュフロー分析

キャッシュフロー

このシリーズの全体構成はこちら(完全ガイド・全24本)

― “経常収支の強さ”を測る重要指標 ―

前回までの流れ

前回までの 2 回(NO.19・NO.20)では、X社の決算書を使って

  • 経常運転資金の計算(NO.19)
  • 資金移動表によるキャッシュフロー計算(NO.20)

を確認しました。

NO.20 では、

  • 簡便法キャッシュフロー(NO.10)
  • 簡便法経常収支(NO.12)
  • 資金移動表による正式の経常収支

を比較し、簡便法キャッシュフローは融資判断に使える精度ではないことを確認しました。

今回はその続きとして、簡便法キャッシュフローと、キャッシュフロー計算書(間接法)の営業キャッシュフローを比較します。

図表1:簡便法キャッシュフロー

当期純利益減価償却費簡便法CF
第11期2,257662,323
第12期2,853992,952
第13期3,1841283,312

図表2:営業キャッシュフロー(間接法)

※モデル決算書は演習用に大幅に省略しているため、必要情報を補って計算しています。

営業キャッシュフロー
第12期10,642
第13期293

簡便法CFと営業CFの比較

図表1と図表2を比較すると、両者に類似性はほとんどありません。

  • 簡便法CFは「利益+減価償却費」という単純計算
  • 営業CFは運転資金の増減を含むため、実態に近い

したがって、簡便法CFを営業キャッシュフローの近似値として使うのは不正確であり、融資判断に用いると誤りを招く可能性があります。

ここからは、私がキャッシュフロー分析で重視している 資金移動表(経常収支) に基づき、X社の経常収支のレベルを検証していきます。

演習:経常収支比率を計算する

計算式

ワークシート

経常収入経常支出経常収支経常収支比率
第12期
第13期

演習:経常収支比率の計算結果

経常収入経常支出経常収支経常収支比率
第12期62,26453,2419,023115.00%
第13期94,94846,09548,853102.05%

図表3:経常収支のレベル(法人税・配当金との比較)

項目第12期第13期
経常収支9,0231,908
法人税等2,1632,227
経常収支 − 法人税等6,680-319
配当金764795
経常収支 − 法人税等 − 配当金6,096-1,114

第13期は法人税等の段階でマイナスのため、配当金も当然カバーできません。

経常収支比率の読み取り

X社の経常収支は両期ともプラスで、経常収支比率も100%を上回っています。 ただし、その水準には大きな差があります。

  • 第12期:115%超 → 直感的にも余裕がある水準
  • 第13期:102.05% → かろうじて100%を上回るだけで、キャッシュフローの余裕は大きく低下

問題は、この水準で「十分」と言えるかどうかです。

経常収支で賄うべき4つの支出(NO.16より)

  1. 当期法人税等引当額
  2. 社外分配金(配当金)
  3. 固定資産の維持更新投資
  4. 長期借入金(社債)の年間返済額

今回は財務諸表から把握できる ①法人税等引当額、②配当金 を経常収支と比較します。

配当金は「前期の配当金を当期に支払う」ため、キャッシュフロー計算では前期の金額を使用します。

  • 第12期:法人税等+配当金をカバーし、なお 6,096千円の余剰
  • 第13期:法人税等の段階で既にマイナス → 配当金もカバーできない

NO.16 で述べた 「配当金があるのに経常収支比率が100%以下なら要注意」 という状態ではありませんが、第13期の配当政策には疑問が残ると言わざるを得ません。

次回予告

次回(NO.22)は、今回の分析を踏まえて 「経常収支の“質”をどう評価するか」 をテーマに、さらに一歩踏み込んだ検証を行います。

次の記事(NO.22)はこちらです。

前の記事(NO.20)はこちらです。

全24本のガイド一覧に戻る。

シリーズ全体を俯瞰できるNO.24「キャッシュフロー分析のまとめと収益性分析」はこちらです。

タイトルとURLをコピーしました