NO.20 資金移動表によるキャッシュフロー計算

キャッシュフロー

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前回までの流れ

前回はモデル企業 N社の決算書を使い、経常運転資金所要額を計算しました。 今回はその続きとして、資金移動表を用いたキャッシュフロー計算 を行います。

あわせて、第10回・第12回で扱った

  • 簡便法キャッシュフロー
  • 簡便法経常収支

と比較し、どの指標が実態に近いのか を確認します。

1. 簡便法キャッシュフローの計算

NO.10で紹介した式を使います。

図表1:簡便法キャッシュフロー(ブランク)

当期純利益減価償却費簡便法CF
第11期
第12期
第13期

演習1(簡便法CF・解答)

当期純利益減価償却費簡便法CF
第11期2,257662,323
第12期2,853992,952
第13期3,1841283,312

●2. 比較貸借対照表・損益計算書(演習用)

NO.19 と同様、今回もモデル決算書を使用します。

  • 図表2:比較貸借対照表
  • 図表3:損益計算書

3. 簡便法による経常収支の計算

NO.12で紹介した式を使います。

図表4:簡便法経常収支(ブランク)

経常利益減価償却費運転資金増分簡便法経常収支
第12期
第13期

演習1(簡便法経常収支・解答)

経常利益減価償却費運転資金増分簡便法経常収支
第12期5,01699-2,6747,789
第13期5,6341283,3852,377

演習1:簡便法キャッシュフローと簡便法経常収支の比較

簡便法CFと簡便法経常収支の差異を確認し、 どちらが実態に近いかを読み取ります。

演習2:資金移動表による正式の経常収支

次に、資金移動表を用いた正式の経常収支 を計算します。

比較貸借対照表には各項目の増減額が記載されています。 これを資金移動表の「経常収支の部」に転記して計算します。

図表5:資金移動表(経常収支の部・ブランク)

項目第12期第13期増減額
経常収入
売上
売上債権増▲
前受金増
営業外収益
経常収入合計
経常支出
売上原価
販売管理費
営業外費用
棚卸資産増
買入債務増▲
前渡金等増
減価償却費▲
貸倒引当金増▲
退職給与引当金増▲
経常支出合計
経常収支

演習2(資金移動表・解答)

6. 解説

計算結果を比較すると、次のことがわかります。

  • 簡便法キャッシュフローは実態から大きく乖離する
  • 簡便法経常収支は、正式の経常収支にかなり近い値になる

これは、簡便法経常収支の計算式が 資金移動表の構造に近い ためで、当然の結果と言えます。

一方で、簡便法キャッシュフローは 融資判断に使うには不正確すぎる指標 であることが改めて確認できます。

演習2の資金移動表(解答)を見ると、 経常収支の実態は簡便法CFとは大きく異なる ことが明確です。

7. 実務的な補足:経常運転資金の融資について

前回触れたように、経常運転資金を長期の証書貸付で融資するケースは珍しくありません。 しかし本来、経常運転資金は 1年以内の手形貸付(短期融資) で対応すべき性質の資金です。

理由:

  • 経常運転資金所要額は変動する
  • 短期融資で対応し、継続時に試算表・決算書で必要額を確認するのが本来の姿
  • 「単名の転がし」は実質的に長期資金化しているが、金利や手続きの都合によるもの

注:単名とは

  • 手形貸付の際、債務者のみが署名する手形=単名手形
  • 手形貸付そのものを「単名」と呼ぶこともある
  • 「短命」ではない
  • 転がし=手形貸付を継続反復すること

次回予告

次回は、 キャッシュフロー計算書(間接法)による営業キャッシュフロー と、 簡便法キャッシュフロー を比較します。

簡便法キャッシュフローがなぜ実態を反映しないのかを、 より明確に確認します。

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