楽しく学べる!財務・マーケティング NO.19
🟦1.ある食品スーパーの事例
金融モニタリング基本方針では、財務データや担保に過度に依存しない「事業性評価」に基づく融資が求められている。この方向性は、2003年のリレーションシップバンキング以来の流れである。
事業性評価では、企業の販売力や技術力を把握する必要がある。しかし、技術力の評価は一般の金融機関にとってハードルが高い。一方、販売力は定量化しやすく、担当者にとって取り組みやすい領域である。
食品スーパー(SM)の販売力を分析する方法として、総務省「家計調査」を活用する手法がある。地域別・所得階層別に細かく消費支出が掲載されているため、SMの取扱商品と重なる項目を抽出し、商圏人口を掛け合わせれば商圏内の総消費支出を算出できる。 分母に商圏内総支出、分子に当該店の売上高を置けば、売上シェアが求められる。
ある地方都市のSMは、このシェアが50%を超える高水準であった。高い販売力を支えていたのは「低価格」である。しかし、粗利益率は約19%とディスカウントストア(DS)並に低く、売上高販管費比率は21%と高い。その結果、営業利益は2%の赤字であった。
DSのKFS(Key Factor for Success)は、低い値入れでも利益を確保できるローコスト・オペレーションの構築である。このSMはローコスト体制を持たずに安売りをしていたため、まさに『鶴の恩返し』の「つう」のように、自らを削って顧客に尽くしていたと言える。
販売力が高いのも当然である。ローコスト体制を持つDSは人件費率を抑えるため従業員数が少ないが、このSMは一般のSM並みに人員を配置していた。顧客は「DS並の安さ」と「SM並のサービス」を同時に享受できるため、CS調査の結果も良好だった。
🟦2.ABC分析
販売力を定量化できても、利益が出なければ宝の持ち腐れである。改善策はローコスト・オペレーションの確立であり、人員配置や人件費の見直しによる販管費率の低減が急務である。
粗利益率改善のために値入率を上げることは慎重にすべきだ。価格を上げれば、低価格に引かれて来店している顧客が離反する可能性が高い。粗利益率は、商品管理の徹底によっても改善できる。そのためには現状分析が欠かせない。
商品別分析の基本がABC分析(パレート分析)である。手順は次のとおりである。
- アイテム別売上高を大きい順に並べ、累計を求める
- 総売上高を100として、構成比と累計構成比を算出する
一般的には、Aランク:上位20~30%のアイテムで売上の約70%、Bランク:中位20~30%で約25%、Cランク:残り50%で約5%を占めるとされる。ABC分析は、売上高基準で商品管理の優先順位を示すものである。
注意すべきはCランクの扱いである。 「Cランクは切り捨てればよい」と考える人がいるが、これは誤りである。Cランクには新商品も含まれるし、関連購買を促進する“縁の下の力持ち”商品もある。利益額で分析すれば、結果が変わることもある。
また、ABC分析は「全商品が均等に管理されている」ことを前提としている。実際には、管理の手抜きによって本来売れるはずの商品がCランクに落ちている可能性もある。
玉城芳治氏は『マーケティング分析』(同友館)で「CグループのCはCut offではなく、Consider(熟慮せよ)のCである」と述べている。まさに的確な指摘である。この『マーケティング分析』は私が初めてマーケティング関連の書籍を著した際に大変参考にしたものです。とても実践的な記述がなされている本です。興味をお持ちになった方は一度手に取ってみることをお勧めします。
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シリーズ5:地域金融機関という人間牧場-いろんな人がいた- →公開準備中。7月から公開予定
