書を持って街へ出よう-事業性評価とフィールドワーク

経営分析
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楽しく学べる!財務・マーケティング NO.25

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🟦1. 定性分析と「デジタル値信仰」の落とし穴

金融界では「効率」という言葉が好まれ、「効率的な営業」「営業活動の効率化」といった表現が頻繁に使われる。人海戦術を前提とした現状を“非効率”と捉え、効率化の手段としてまず導入されるのがコンピュータによるシステム化である。その代表例が財務分析システムである。定量的な作業である財務分析は、計算をシステムに任せることで処理速度が向上するというハードメリットがある。

一方で、「システム化によって若手の財務分析能力が低下した」という指摘は通説となりつつある。しかし、計算力と分析力は同じではない。若手の分析力低下は、システム化で生まれた時間を営業活動に振り向け、学習の機会を減らした組織側の問題が大きい。

さらに、システムが出した計算結果をレーティングに変換することを「財務分析」だと誤解するケースもある。本来は、システムが計算を終えたところから担当者の分析が始まるはずだが、計算結果をそのまま意思決定に使う“デジタル値信仰”が根強い。デジタルな数値がそのまま戦略判断の指針になるという錯覚である。

定性評価のシステム化も進んでいるが、システムはあくまで手段であり、最終的な判断は担当者の分析力に依存する。システム化に頼りすぎれば、財務分析システム導入時と同じく“ソフトデメリット”を再び生むことになる。

🟦2. 効率と効果のトレードオフ

効率を重視する経営は、同じ方法を繰り返して習熟を高めたり、規模の経済を追求したりする。小売業でいえば、販売方法を単純化して、低い粗利益率で勝負するディスカウントストアが典型である。

一方、効果(顧客満足)を重視する経営は、顧客ニーズに応じて柔軟に対応する必要がある。高級ブランド店のように差別化戦略を採る企業がこれに当たる。効果を追求すればコストが増え効率は下がり、効率を追求すれば顧客対応が画一化して効果が下がる。両者はトレードオフの関係にある。

金融に置き換えると、効率追求トランザクションバンキング効果追求リレーションシップバンキングに相当する。

社会学の調査手法も同様で、定量調査は「浅く広く」、定性調査は「深く狭く」を特徴とする。定量調査は統計学を用いて仮説を検証するが、定性調査は担当者の思考プロセスそのものが分析の中心となる。これはリレーションシップバンキングの姿勢と重なる。

企業分析とは、財務という“結果”と、経営の仕組みという“原因”の関係を明らかにする作業である。そして、原因と結果を追求する事業性評価にはマーケティングや組織論などの知識、そして論理的思考力が不可欠である。

企業の現場に足を運び、経営者にインタビューし、実態を深く理解する担当者は、まさにフィールドワーカーである。 書を持って――理論を身につけて――街へ出よう。

追記

現在ならAI融資判断もできるだろうと考える人もいるかもしれないが、それは思考の重要性を否定する危険な発想だと思う。

記事の最後にフィールドワーカーについて触れたように、フィールドワークの考え方や技術は地域金融機関の業務と密接な関係があると思います。興味を持たれた方は、以下から詳細をご覧いただけます。

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