振りむかないでいてほしい ― 戦略とROAの関係(その2)

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🟦1.差別化戦略とROAの特徴

前回に続き、マイケル・E・ポーターの戦略類型のうち 「②差別化戦略」とROAの関係について述べる。

差別化戦略を採用する企業のROAには、次のような特徴がある。 コスト・リーダーシップ戦略とは逆で、売上高利益率は高く、総資産回転率は低くなる傾向がある。

(売上高利益率:高め / 総資産回転率:低め)

差別化戦略は、品質・品揃え・サービスなどで競合との差異を打ち出す戦略である。

品質を重視する企業は製造費や研究開発費が高くなり、 高級専門店のように接客サービスを重視する企業は研修費を含む人件費が増える。

ブランド価値を維持・向上させるための広告宣伝費や販売促進費も必要である。

こうした付加価値の積み上げにより、 一般的にプライシングは高め、粗利益率も高めになる。

一方、資産運用の面では、製造業なら生産設備や研究開発設備、 小売業なら店舗の内装や什器などに投資が必要となる。

そのため、総資産が相対的に大きくなり、総資産回転率は低くなるのである。

🟦2.「差別化のための差別化」という落とし穴

差別化戦略は、コスト・リーダーシップ戦略より難易度が高い。 コストは企業が主体的にコントロールできるが、 差別化の評価は企業ではなく顧客が下すからである。

この点を理解していないと、他社との本質的に意味のない違いを 強調するだけのマーケティングに陥りやすい。

これがいわゆる「差別化のための差別化」であり、 組織の視点が市場ではなく内部に向いてしまっている状態である。

当然ながら、こうした“ひとりよがりの差別化”は効果が低い。 競合企業から見れば、模倣しようと思えばできるが、 模倣しても効果が薄いので放置される。

そもそも差別化は本質的にチャレンジャーの戦略である。

市場地位の低いフォロワー企業が差別化を図っても、 顧客からも競合からも無視されることがある。

大型スーパーが同規模店の価格は注視しても、 小規模店の価格を気にしないのと同じである。

マーケティングでは、差別化戦略に限らず効果測定が不可欠だ。

プロモーションごとに売上増加率やリピート率などの反応を記録しておけば、 新しい施策の判断材料になる。

これを怠ると、マーケティングの質は低下する。

ここで重要なのは、データベースの有無よりも、 マーケティング・マインドが組織に根付いているかどうかである。

「差別化のための差別化」に陥り、 さらに効果測定も行われていない企業は、 「他社が追随してこないこと」を差別化の成功と誤認するようになる。

その結果、 「この機能が付いているのは当社だけです」 と独自性を強調するが、 顧客の支持ではなく“追随されないこと”を成功とみなす倒錯した状態に陥る。

まるで競合企業に、そして顧客にさえも 「振りむかないでいてほしい」と願っているかのようである。

🟦3.あとがき:差別化を叫びながらコスト削減に走る企業への疑問

差別化戦略は難易度が高いにもかかわらず、採用したがる企業は多い。

しかし、「差別化、差別化」と唱えながら、 実際にはコスト削減ばかり行っている企業もある。

それはいったい何を目指しているのだろう。

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