NO.22 経常収支比率の理想値とインカバの分析

キャッシュフロー

このシリーズの全体構成はこちら(完全ガイド・全24本)

前回までの流れ

NO.20〜NO.21 では、 「経常収支で必要支出をどこまで賄えているか」 というテーマで、N社の財務体質を段階的に検証してきました。

前回(NO.21)は、経常収支でカバーすべき4項目のうち ①当期法人税等引当額 ②社外分配金(配当金) の2つを取り上げ、 X社の経常収支が十分とは言えない状況を確認しました。

今回はその続きとして、残る③④を加え、 4項目すべてを対象に総合的な分析を行います。

経常収支でカバーすべき4つの支出

経常収支で負担すべき支出は次の4項目です。

  • 当期法人税等引当額
  • 社外分配金(配当金)
  • 固定資産の維持更新投資
  • 長期借入金(社債)の年間返済(分割償還)額

③の維持更新投資は、NO.16 で紹介した実務的手法に従い、 当期減価償却費の30%を維持更新額とみなす方法で算定しています。

④の長期借入金(含む社債)の年間返済額は、貸借対照表の流動負債に計上される 「一年以内返済予定長期借入金(償還予定社債)」を用いるため、 当期の経常収支と対応させる目的で前期の金額を使用します。

4項目控除後の結果と「理想的な経常収支比率」

図表1のとおり、第12期・第13期ともに ①〜④を差し引くと 大幅なマイナス となります。

そこで、両期について 「理想的な経常収支比率」 を計算します。

これは、4項目すべてをカバーするために必要な経常収支比率を意味します。 計算過程は図表2を参照してください。

第13期の経常収支比率は、この理想値と比較するとかなり低い水準にあります。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(インカバ)と収支インカバの演習

NO.18 で紹介した2つの金利負担能力指標を計算します。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(インカバ)

収支インカバ(キャッシュフローベース)

※営業収支=経常収支 − 営業外収益 + 営業外費用

図表3に必要データを示します。

図表3

損益計算書(抜粋)

項目      第12期  第13期

営業利益     5,887    6,337

営業外収益      459      663

  うち金融収益    140      147

営業外費用   1,330    1,332

  うち金融費用 1,248       60

資金移動表(抜粋)

項目      第12期  第13期

経常収入    62,264  94,984

経常支出    53,241  93,076

図表4

インタレスト・カバレッジ・レシオ

項目         第12期   第13期

営業利益(A)     ___   ___

金融収益(B)     ___   ___

事業利益(A+B)   ___   ___

金融費用(C)     ___   ___

インカバ(A+B)÷C  ___   ___

図表5

営業収支の計算

項目              第12期   第13期

経常収入(A)          ___   ___

営業外収益(B)         ___   ___

営業収入(A-B)         ___   ___

経常支出(C)          ___   ___

営業外費用(D)         ___   ___

営業支出(C-D)         ___   ___

営業収支(A-B)-(C-D)    ___   ___

図表6

収支インカバ

項目            第12期   第13期

営業収支(A)        ___   ___

金融収益(B)        ___   ___

金融費用(C)        ___   ___

収支インカバ(A+B)÷C   ___   ___

インカバと収支インカバの結果とその背景

興味深いことに、経常収支が弱い第13期でも、 インカバと収支インカバは第12期より大幅に改善しています。

改善の主因は 分母である金融費用の急減 であることが計算過程から明らかです。

しかし図表7を見ると、 有利子負債(長短借入金+社債)はむしろ増加しています。

通常、有利子負債が増えているにもかかわらず金利負担が減少するのは、 一般的には不自然です。

そこで、第12期・第13期の 有利子負債利子率(=金融費用 ÷ 有利子負債平均残高 ×100) を計算します。

有利子負債利子率の異常値

第12期の利子率は、当時(2004年)の金利水準として妥当です。 しかし第13期は 0.12% と、明らかに異常な低さです。

一般に、有利子負債利子率が金利水準に比べて高すぎる場合は 簿外債務の存在を疑いますが、 N社の場合はその逆で、 金利負担が不自然に低すぎるという状況です。

次回予告:異常に低い金利負担の正体に迫る

次回(NO.23)は、今回明らかになった 「金利負担が異常に低い」という異常値の背景 に踏み込みます。

  • なぜ有利子負債が増えているのに金利費用が激減したのか
  • 会計処理の問題なのか
  • 資金調達構造の変化なのか
  • それとも別の要因が潜んでいるのか

X社の財務構造を読み解くうえで重要なポイントとなるため、 丁寧に分析していきます。

次の記事(NO.23)はこちらです。

前の記事(NO.21)はこちらです。

全24本のガイド一覧に戻る。

シリーズ全体を俯瞰できるNO.24「キャッシュフロー分析のまとめと収益性分析」はこちらです。

タイトルとURLをコピーしました