― 金利負担に耐えられるかを測る“実務で最重要”の指標 ―
NO.16で紹介したインタレスト・カバレッジ・レシオ(interest coverage ratio)、略称「イン・カバ」について解説します。
1.インカバの基本式と意味
インカバの計算式は次のとおりです。
インカバ=(営業利益+金融収益)÷金融費用
単位は「倍」です。
- 金融収益:受取利息・配当金など
- 金融費用:支払利息・割引料など
この指標は、企業が金利負担にどの程度耐えられるかを示すもので、値が高いほど金利支払の確実性が高いと判断されます。
最低でも 1倍以上 が必要です。 1倍未満ということは、
となり、経常損失に陥るからです。
かつては事業債の格付基準として
- 1.0倍以上
- 1.5倍以上 などが用いられていましたが、金利水準に左右されるため、時系列で判断することが重要です。 低金利の時代に「1.5倍」はやや低めの基準といえます。
実務では、追加融資の際に 「どの程度の金利上昇や借入増に耐えられるか」 をシミュレーションする用途が代表的です。
2.インカバの分子は「事業利益」
インカバの分子である 営業利益+金融収益 は、金利支払前の利益であり「事業利益」と呼ばれます。
- 営業利益:経営資産が生み出す利益
- 金融収益:金融資産が生み出す利益
企業の総資産は
- 経営資産
- 金融資産 に分けられ、それぞれの成果を合算したものが事業利益です。
ROA(総資産利益率)の分子には経常利益を置くのが一般的ですが、 総資産全体の運用成果を測るなら、事業利益のほうが合理的 という考え方もあります。
3.総資産事業利益率による分析
総資産事業利益率を採用すると、次のような分析が可能になります。
- 金融資産(現金・預金、有価証券、短期貸付金、投資等)
- 経営資産(総資産 − 金融資産)
それぞれの運用成果を分けて評価できるため、 企業がどの領域で利益を生み出しているか を明確にできます。
4.EBIT(利払前・税引前利益)との関係
貸借対照表の貸方に着目すると、 負債に対するリターンは金融費用であるため、 ROA の分子に金融費用を加える考え方も成立します。
アメリカでは ROA の分子として EBIT がよく使われます。
EBIT(Earnings Before Interest & Taxes) =利払前・税引前利益 =税引前利益+金融費用 =(日本的に言えば)利払前経常利益
EBIT を使うメリットは、
- 負債比率
- 節税対策
- 税制優遇 などの影響を排除し、総資本の収益性を純粋に測れる点です。
なお、
- 分子に「営業利益+金融収益」(事業利益)を使う場合 → 総資産に割引手形を含めない
- 分子に「経常利益+金融費用」(EBIT)を使う場合 → 割引手形を総資産に含める
という整合性が必要です。
5.割引手形を総資産に含めるかは立場による
ROA の計算で割引手形を総資産に含めるかどうかは、実務でも意見が分かれます。 あなたが属する組織の財務分析システムがどちらの立場を採用しているかは、必ず確認しておくべきです。
なお、営業外損益が金融収益と金融費用だけなら、
- 事業利益(営業利益+金融収益)
- 経常利益+金融費用(EBIT) は同じ値になります。
6.キャッシュフローを使った「収支インカバ」
インカバは実数法の指標ですが、分子にキャッシュフローを使う方法もあります。
資金移動表の 経常収支 − 営業外損益=営業収支 を分子に置くのが「収支インカバ」です。
収支インカバ=(営業収支+金融収益)÷金融費用
キャッシュフロー計算書(CS)を使う場合は次の式になります。
営業キャッシュフローの計算では金融費用と税金が控除されているため、分子に加算して調整します。
実務では、作成が容易な間接法のキャッシュフロー計算書を採用する企業が多い点も覚えておくとよいでしょう。
