押してもダメなら引いてみるープッシュ戦略とプル戦略ー

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🟦1.販売員活動と広告:プッシュ戦略とプル戦略

マーケティングにおけるプロモーションは、大きくプッシュ戦略プル戦略に分けられる。 図に示すように、販売員活動を重視するのがプッシュ戦略広告を重視するのがプル戦略である。

プッシュ戦略:流通を“押す”アプローチ

プッシュ戦略では、メーカー(川上)が卸売業者(川中)や小売業者(川下)に対して、販売員による説明・応援などのサポートを行い、流通経路を上から下へと押し流すように製品を売ってもらうことを狙う。

メーカーによるサポートには、以下のような流通業者にとってのメリット提供も含まれる。

  • 特別出荷:例)10ケースの注文に対して11ケースを出荷する
  • アロウワンス(allowance):広告実施や有利な陳列に対する金銭的見返り
    • 機能対価リベートとも呼ばれる
    • 一般的なリベート(rebate)が長期的取引を前提とするのに対し、アロウワンスは特定製品を対象とした短期的割引

プル戦略:消費者から“引っ張る”アプローチ

プル(pull)は「引っ張る」の意味。広告によって消費者に製品を訴求し、小売店での指名買いを促すことで、消費者 → 小売 → 卸 → メーカーへと注文が遡っていく。

アメリカはプル、日本はプッシュ

  • アメリカ:国土が広く、広告で消費者に働きかけて“引っ張る”方が効率的 → 広告費が高くなる
  • 日本:国土が狭く、消費者密度が高い → 流通チャネル政策(プッシュ)が重視されてきた
    • 所得格差が小さく「一億総中流」と言われた単一市場
    • 松下電器産業や資生堂の全国販売網が代表例
    • プッシュ戦略は4PのうちPlace(流通)を重視する戦略で、日本では流通コストの比重が相対的に大きい

🟦2.プロモーションと財務分析

広告活動を財務面から評価する際、代表的な指標が売上高広告費率(広告費 ÷ 売上高 × 100)である。

  • 日本企業:5~6%
  • アメリカ企業:15~25% → プル戦略が主流のアメリカは広告費の比率が高い。

トレンド分析の重要性

比率は単年ではなく、過去数年の推移(トレンド)を見ることが重要。 企業内資料があれば、地域別・媒体別にも算出し、広告活動の濃淡を把握する。

  • 売上高広告費率の逆数(売上高 ÷ 広告費)=広告費効率
  • 広告費伸び率((当期広告費-前期広告費)÷前期広告費 ×100) → 売上高増加率との関係から、広告の弾力性を評価できる

利益との対比も不可欠

売上が伸びても、広告費やその他経費が増えて利益率が下がれば意味がない。 そこで用いるのが広告費貢献度(営業利益 ÷ 広告費)である。

  • 売上増加・広告費効率改善にもかかわらず広告費貢献度が低い → 他のコスト要因に問題がある可能性

プッシュかプルかは比率だけでは判断できない

販売奨励金などを分子に置けば、販売促進の効果分析にも応用できる。

  • 広告費の比率が高い → プル戦略寄り
  • 販売奨励金の比率が高い → プッシュ戦略寄り

ただし、実際には両者を組み合わせる企業が多く、損益計算書の科目名だけでは実態を判断できないことも多い。 タイトルとは裏腹に、マーケティングは「押してダメなら引いてみる」と単純に割り切れるものではない。

追記:野球の“流し打ち”とプル文化?

高校野球の中継で、選手が流し打ちをすると「逆らわずにうまく打ちました」と評価される。 これも、どこか日本の“プル志向”の文化を反映しているのかもしれない。

■参考文献

相原修『ベーシック マーケティング入門』日経文庫

マーケティングの基本的な知識を得るために便利な入門書です。

次の記事(NO.6「分子と分母を合わせよう-ROA:総資産事業利益率-」)はこちらです。

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■その他のシリーズ

シリーズ1:簿記はいらない!経営分析

シリーズ3:YOKOHAMAの歌を読む

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