穴があったらふさぎたい―パッチワーク発想の問題点ー

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🟦1.パッチワーク発想とは何か

財務分析というと、「財務データを業界平均と比較し、差があればその理由をコメントすること」だと考えている人が少なくない。 典型的なのは次のようなパターンである。

  • 「当社の売上高営業利益率は業界平均より5%低い」
  • 「原因は人件費など固定費の負担が大きいからである」
  • 「したがって、固定費(人件費)の削減が必要である」

研修や通信教育の模範解答では、こうした“お決まりの流れ”が頻繁に登場する。

しかし、このコメントには決定的な欠点がある。 「固定費の負担が大きい」→「固定費を削減すべき」 というように、問題点を裏返しただけの“安直な解決案”になっている点である。 これを本稿では パッチワーク発想 と呼ぶ。

金融界ではこのパッチワーク発想が根強いと言われる。出版社によれば、通信添削や検定試験の解答はパッチワークだらけだという。もっとも、これは金融界に限った話ではない。あるコンサルタントがクライアントに対し、

「御社は売上高が業界平均より低いので、売上を上げるべきです」

と提案したという笑い話もあるくらいだ。

では、こうしたコメントは実務で評価されているのか。 おそらく答えは NO だろう。 パッチワークだから評価されないのではなく、実務的な有効性が極めて低いからである。 日々必死に営業している経営者に向かって「固定費を削減すべきです」とだけ言っても、納得どころか不快感を与えかねない。

🟦2.なぜパッチワーク発想に陥るのか

企業活動は大きく分ければ マーケティング(仕組み)財務(結果) の二つで説明できる。 財務はあくまでマーケティングの結果であり、結果だけを見て改善案を考えようとするからパッチワークになる。

本来あるべきアプローチは次の通りである。

  • 財務分析の結果から、マーケティング上の弱点を仮説として推定する
  • マーケティング分析によって改善策を検討する
  • あるいはマーケティング分析の評価基準として財務データを使う

つまり、プロセス(仕組み)を分析し、システムを変える視点が不可欠なのだ。 業界平均との比較は便利だが、使い方を誤るとパッチワーク発想を助長してしまう。

🟦3.時系列比較法とクロスセクション法

財務分析における比較分析には、主に次の2つがある。

時系列比較法

同一企業の複数期間の財務諸表を比較する方法。 「売上総利益率が年々低下している」といった単純な推移チェックで終わりがちだが、本来は 景気・業界イベントなど外部環境の変化を踏まえて解釈する必要がある。 この視点はマーケティング分析とも共通する。

クロスセクション法

同業他社と同一時点・同一期間で比較する方法。 外部環境の影響を共通要素として捨象できるため、企業の戦略や仕組みの違いが浮き彫りになる。

🟦4.比較分析の好例:ダイエー vs イトーヨーカ堂

小売業トップアナリスト・松岡真宏氏は、『小売業の最適戦略』(日本経済新聞社,1998年)で、ダイエーとイトーヨーカ堂を比較し、次のように述べている。

  • 売場面積1㎡あたりの販管費  → ダイエーが最も低く、イトーヨーカ堂が最も高い
  • 売場面積1㎡あたりの売上高  → イトーヨーカ堂が最も高い
  • 結果として売上高販管費比率は  → イトーヨーカ堂が最も低い

つまり、コストをかけて売上を伸ばすイトーヨーカ堂の戦略が奏功していたということだ。 単なる「高コスト体質」という表面的な評価ではなく、資本投入効果(パフォーマンス)を踏まえた分析である。

これは、パッチワーク発想とは対極にある、比較分析の好例と言える。

🟦まとめ

  • パッチワーク発想とは「問題点の裏返しを解決策にする」安直な思考
  • 財務は結果であり、改善案はマーケティング(仕組み)から導くべき
  • 比較分析は時系列とクロスセクションの両面から行う
  • 良い比較分析は、戦略・仕組みの違いまで踏み込んで評価する

次の記事(NO.2「平均年齢20歳の女性に会いたい-平均値に対する幻想-)はこちらです。

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