経営活動を欠くビジョンは白昼夢である ― ビジョンと経営理念を考える ―

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楽しく学べる!財務・マーケティング NO.9

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🟦1.あなたが思い描く未来の姿は?

YouTube番組『令和の虎』では、応募者が5人の経営者(虎)の前で事業計画をプレゼンし、出資を求める。応募者が入室して自己紹介を終えると、司会者は必ずこう尋ねる。

「あなたが思い描く未来の姿は?」

これはまさに、経営におけるビジョンを問う質問である。 ビジョンとは、経営理念目標を合わせた、経営活動の最上位概念である。

ここで、ビジョン理念戦略の関係を整理した図を示しておく。

番組の性質上、応募者は事前準備をしているため一応の回答はできる。しかし、その質には大きな差がある。「〇〇を起業して売上××円を目指す」といった回答も多いが、これはビジョンではなく単なる目標にすぎない。

経営者でもビジョンを語れない人は多い

コンサルティングの現場で経営者にヒアリングをすると、ビジョンを明確に語れる人は少数派である。ビジョンの構成要素である経営理念については、NO.4「真の差別化は『目に見えないところ』に宿る」で触れた。

「御社の経営理念は?」と直接聞くと答えにくいので、「社長のモットーは何ですか?」と尋ねることが多い。しかし中小企業の経営者の中には、しばらく考え込んでしまう人もいる。

小売業では、熟考の末に返ってくる答えはたいてい次の2つだ。

  • お客様第一
  • 良い品をより安く

中小小売業の理念としては“ビッグ2”と言ってよいだろう。

モットーはあるが、戦略がない

この2つをすらりと言える経営者もいるが、多くの場合はモットーだけで、戦略・戦術・オペレーションが伴っていない。つまり、マーケティング・マインドが欠如しており、モットーが単なる“お題目”になっている。

理念が「タテマエ化」してしまう典型例である。 キャッチフレーズだけでは経営は動かない。理念を実現するための戦略戦術が欠落していては、経営体として問題がある。

🟦2.「お客様第一」でなぜ悪いのか

ここでは、先ほどの“ビッグ2”を例に、戦略上の問題点を具体的に見ていく。

①「お客様第一」ではターゲットが不明確

「お客様」とは誰なのか。 この問いに答えられなければ、マーケティングの基本であるターゲット設定ができていない。

ターゲットが定まらなければ、以下のマーケティング4P(注)の設計もできない。

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(販売促進)

ここで、4Pの位置づけを図で確認しておく(上図参照)。

(注:4PはE・J・マッカーシーによる代表的なマーケティング手段の分類であり、これらの組合せをマーケティング・ミックスと呼ぶ。)

②「良い品をより安く」もターゲット次第で意味が変わる

「良い品」とは誰にとっての“良い”なのか。

  • 低価格を最重視する人  →「できるだけ安い商品」が“良い品”  → 店舗の美観や陳列には価値を感じない
  • 品質・デザインを重視する人  →「高品質の商品」が“良い品”  → 店舗の雰囲気やブランド性も評価対象

この2タイプを1店舗で同時に満足させるのはほぼ不可能である。 ターゲットを絞らなければ、「良い品」の定義すら決められない。

③「より安く」は競合と価格戦略の問題

価格で勝負するなら、競合店の把握と市場環境の分析が不可欠だ。しかし、戦略が欠如しているとプライシングは恣意的になりがちだ。

さらに、価格はターゲットの価値観とも密接に関係する。

  • ブランド志向の顧客は、安すぎると逆に不安を感じる
  • ターゲットによっては、他店より高く売る方が正しい場合もある

有名ブランド品が典型例だ。

④顧客の顔が見えていない経営者は多い

小売業は“face to face”が基本であるにもかかわらず、誰に売っているのかが曖昧なまま営業している経営者は意外に多い。

補記:タイトルの出典

タイトル「経営活動を欠くビジョンは白昼夢である」は、次の言葉に基づいています。

“Vision without action is a daydream. Action without vision is a nightmare.”

記事中の図は『現代マーケティング 新版』から一部加工して引用しました。嶋口充輝石井淳蔵による戦略的マーケティングを論じた基本書です。

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シリーズ3:YOKOHAMAの歌を読む

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