フリーサイズは嫌われる ― 市場細分化とターゲット

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🟦1.デモグラフィック変数

あるブティックの経営者にターゲットを尋ねたところ、「35歳から45歳の女性」と明確な答えが返ってきた。しかし実際の顧客は「50代が最も多く、次いで30代前半」。 つまり、設定したターゲットと実際の顧客層が大きくズレていたのである。

マーケット・セグメンテーション(市場細分化)の基準は大きく二つに分かれる。

  • デモグラフィック変数:性別、年齢、所得、職業、学歴など
  • サイコグラフィック変数:ライフスタイル、価値観、パーソナリティなど

デモグラフィックは国勢調査などから入手できるが、サイコグラフィックは調査が必要である。金融界ではマーケティング・リサーチが軽視されがちで、年齢ベースの画一的なターゲット設定が多い。しかし、これはマーケティングとしては不十分である。

基本的なことだが、年齢と世代はまったく違う概念である。 年齢は物理的な数字だが、世代は「共通の時代体験を持つ生活者群」。 団塊の世代は何歳になっても団塊の世代であり、その子ども世代である「団塊ジュニア」をターゲットに成功したのが無印良品である。

また、日本人は同質的と言われるが、地域によって生活者意識は大きく異なる。 気候差(北海道と沖縄)、歴史文化(県民性)、幕藩体制の影響など、地域文化は今も残っている。富山市民が金沢を「加賀百万石だから」と持ち上げ、自県を控えめに評価する例はその象徴である。

地域金融機関は地元出身者が多く、地域文化を“空気のように”受け入れてしまいがちだが、ターゲット地域の特性を意識することはマーケティングの基本である。

🟦2.ある飲食店の事例

百貨店の福袋には衣料品が入っているが、サイズはフリーサイズ。 「誰が買うか分からないから」という理由だが、普通は自分のサイズを買いたいものだ。 つまり、ターゲットが存在しない商品になっている。

同じ問題は飲食店でも起こる。

駅前の商店街にあった軽飲食店は、大学・事業所・住宅街に囲まれた好立地。 メニューもサンドイッチ、カレー、スパゲッティ、パフェなど幅広く揃えていた。 しかし店内にはスポーツ新聞や漫画が置かれ、実際の利用客は中年男性が中心。 「誰でも来られる店」を目指した結果、回転率が低く業績は伸びなかった。

そこで店舗改装に合わせてターゲットを再設定した。

  • コンセプト:「おいしくてヘルシー」
  • ターゲット:若い女性(女子大生・OL)
  • メニュー:パスタ中心、量は控えめ、サラダ付き
  • ドリンク:輸入ビール小瓶、輸入ワイン
  • 店舗:窓を大きくし明るい内装、席数を減らしゆとりを確保

結果、狙い通り若い女性の支持を得て繁盛店となった。

どんな客層にも対応できる店は、誰にとっても魅力的な店にはならない。 フリーサイズは嫌われるのである。

追記

婦人雑誌を発行していた出版社が妊婦・育児雑誌市場に参入したが、少子化で市場が縮小し破綻した。 ターゲットを絞っても競争に勝てるとは限らない。 マーケティングは奥深く、難しい。

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