Bonus Track という“寄り道”の章
Bonus Track は、「YOKOHAMAの歌を読む」本編から少し離れ、横浜の歌をめぐる周辺的な話題や、歌の背景に潜む別角度の物語を取り上げる小さな寄り道の章である。本編では触れきれない視点や、横浜の音楽文化を読み解くための補助線となるエピソードを、気軽に楽しんでいただければと思う。
横浜銀蝿を取り上げる理由
今回は横浜を歌った曲そのものではなく、横浜にゆかりの深いアーティスト──横浜銀蝿──を番外編として取り上げる。
日本におけるロックンロール観
日本で「ロックンロール」と聞くと、多くの人は「ジョニー・B・グッド」に代表されるオールド・ロックンロールを思い浮かべるだろう。音楽的にはシンプルな構造で、チャック・ベリーの時代にすでに完成したジャンルである。革ジャンにリーゼント(キャロル)のスタイルも定番化しており、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドが白いツナギにサングラスで登場したときには、「この手があったか」と思わせた。
ロックンロールが抱える“枠の狭さ”
ロックンロールは、その枠組みの狭さゆえに、長く同じ場所にとどまって再生産を続けるのが難しい。そこからスタートしたミュージシャンも、やがて音楽的な幅を広げていく。矢沢永吉はオールド・ロックンロールを出発点にしながら、最も見事に昇華した例だろう。
コミック性というロックンロールの宿命
ロックンロールを突き詰めていくと、どこかコミカルな方向へ向かう傾向がある。チャック・ベリーのダック・ウォークは、今ではほとんどギャグのように見える。ハウンドドッグはひたすらシリアスにロックンロールしているのに、どこかコミカルな印象を与えた。 この“コミック性”を意識的に拡張したのが、サザンオールスターズ(桑田佳祐)だと言える。
ロックンロールの本質は“様式”へ
チャック・ベリーのダック・ウォークが象徴するように、ロックンロールの本質は、もはや音楽そのものよりも“様式(モード)”にある。ヘビーメタルにも同じ傾向が見られる。
横浜銀蝿の知性──様式を逆手に取る
1980年にデビューした横浜銀蝿は、このロックンロールの限界を逆手に取った、非常に知性的なバンドだった。 派手なリーゼントにサングラス、革ジャンに白のドカンというスタイル。「ツッパリHigh School Rock’n Roll(登校編)」(1981年)、「ヒップフリフリロックンロール」(同年)など、ジョークであることを承知のうえで、あえてシリアスに演じ切る。その徹底ぶりが魅力だった。「アイ・ラブ横浜」(同年)という曲もある。 その音楽性については、作曲家・いずみたくが絶賛していた。
ケレン味と批評性を併せ持つバンド
バンドの正式名称は THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIAL。 このケレン味のある名乗りも含め、彼らはロックンロールの本質が“様式性”にあることを理解し、そのうえで批評性を持って表現していた。
補記
いずみたくは横浜銀蝿について「スリーコードしか使わないなんてもったいない」と新聞に寄稿していました。このバンドの音楽性を楽しむには”全曲集”がおすすめです。
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■関連記事はこちらです。
ダウン・タウン・ブギウギ・バンド→NO.10「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」/NO.17「Once Upon a Time in YOKOHAMA」→公開準備中
矢沢永吉→NO.16「YOKOHAMA 二十才まえ」→公開準備中
桑田佳祐→NO.14「恋人も濡れる街角」→公開準備中
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