1969年「本牧ブルース」とゴールデン・カップスの転換点
ザ・ゴールデン・カップスの6枚目のシングル「本牧ブルース」は1969年に発売された。直後にエディ藩とケネス伊東が脱退したため、これはオリジナルメンバーによる最後のシングルという位置づけになる。
作詞はなかにし礼、作曲は村井邦彦。完成度の高い佳曲だが、興味深いのは“本牧”という地名が歌詞に一度も登場しない点である。
タイトルに“本牧”が出てこない理由
以前、ご当地ソングの多くが「恋と涙と地名の連結」という平板な構造に陥りがちだと述べた。しかし「本牧ブルース」はその対極にある。 タイトルと歌詞が直接結びつかない曲は少数派で、ご当地ソングではなおさら珍しい。むしろこの曲は“ご当地ソングではない”と考えた方が自然かもしれない。
サウンドが語る本牧の空気
サウンド面では、デイヴ平尾の意外にも癖のないボーカルと、エディ藩のギラついたギターソロが強烈な印象を残す。歌詞に地名がなくとも、音の質感そのものが本牧の空気を伝えているように感じられる。
本牧という街とカップスの象徴性
ゴールデン・カップスというバンドは、アメリカ文化と日本文化が混ざり合った独特のエリア=本牧を象徴する存在だった。 オリジナルメンバーのケネス伊東は早世し、アイ高野、柳ジョージもすでにいない。ルイズルイス加部、マモル・マヌー、デイヴ平尾、エディ藩もこの世を去った。今も残るのはミッキー吉野だけだ。
浜っ子が忘れない1960年代の記憶
街と音楽がここまで融合した例は稀であり、本牧とゴールデン・カップスはその象徴的な組み合わせだった。その音楽がロックであったことも幸運だったと言える。 1960年代に「本牧ブルース」を残したバンドとして、ザ・ゴールデン・カップスの名は浜っ子の記憶から消えることはないだろう。
補記:ザ・ゴールデン・カップスの音楽性
ゴールデン・カップスは、横浜・本牧を拠点に活動し、日本のロック黎明期にブルースやR&Bを本格的に取り入れたバンドとして知られています。3rdアルバム『BLUES MESSAGE』は、彼らのブルース志向が最もよく表れた作品で、「本牧ブルース」もこのアルバムに収録されています。
近田春夫氏の著書『グループサウンズ』によれば、この曲はブルース・プロジェクトの「I Can’t Keep from Crying Sometimes」に強く影響を受けているという。近田氏は「カップスで一番歌いたくなる曲です」と記している。
また、ゴールデン・カップスを語るうえで欠かせないのが、ルイズルイス加部のベースです。「銀色のグラス」において縦横無尽に奔るベースは、彼の実力と存在感を象徴する名演と言えます。この曲を含むベスト盤『THE GOLDEN CUPS Complete BEST “BLUES OF LIFE”』は、代表曲を網羅した決定版で、バンドの魅力を総合的に味わえる内容です。
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